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今日はおすすめの落語家シリーズです。
前回は古今亭志ん朝師をご紹介しましたが、今回はその実兄である

10代目 金原亭馬生師匠についてお伝えします。

師匠はすでに亡くなっており、現在ではお弟子さんが11代目を名乗っています。
しかしながら、先代が現在の落語界に与えている影響は本当に大きいと思います。

それではまずは略歴です。

昭和18年 父・志ん生に入門し、むかし家今松。
昭和23年 古今亭志ん橋を襲名し、真打昇進。
昭和24年 10代目・金原亭馬生を襲名。
昭和57年 54歳の若さで死去。

まずこの略歴を見て思うこと。

二ツ目昇進はいつ?

ということなんですが、戦乱の中、父・志ん生が有無を言わさず入門させ、

最初から二ツ目扱い

ということだったそうです。

馬生師匠は、父・志ん生が満州で行方知れずになっている間、戦後の激動期を耐え、家族を守った立派な方です。

しかし、「親の七光り」という評価が付いて回り、多くの嫉妬に苦しめられたそう。
馬生師匠はそれにもめげず、落語の稽古はもちろん、茶道・華道・踊りなど、人間修養にいそしんだとのことです。

そして父の芸風とは異なる、きめ細かい描写と情感のこもった口調で、地位を確かなものにしてゆきます。

私などは映像で観ることぐらいしかできないのですが、
そのたたずまいや仕草、語り口調はすべて上品でまことに味があります。

馬生師匠の弟子と言えば、現役で大活躍している

  • 金原亭伯楽
  • むかし家今松
  • 五街道雲助
  • 当代馬生

など、そうそうたる師匠たちです。
馬生師匠は弟子を育てる点でも、本当に優れた方だったんですね。

師匠が54歳という若さで亡くなったこと、本当に本当に惜しまれます。

派手な存在ではなくとも、確かな芸で落語人気を支えた馬生師匠。
「戦前派」と言われるベテラン勢と「戦後派」と言われる若手のつなぎ役としての役割も大きく、落語界の宝の1人であったと、ある本に書かれていました。

大好きなお酒がたたってか若くしてガンの宣告を受けたものの、治療を拒否して高座に上がり続けたという馬生師匠。
その落語に対するストイックな愛情は、弟子、孫弟子へと、現代でも多大な影響を与え続けています。

さて、馬生師匠の得意演目は、

  • 『笠碁』
  • 『二番煎じ』
  • 『親子酒』
  • 『目黒のさんま』
  • 『鰍沢』

などなど。

私はとくに『親子酒』が大好きです。
馬生師匠は大店(おおだな)の主人そのものという感じで、芸風がぴったりなんです。
何度聴いてもクスクスと笑ってしまいます。

端正な落語。
志ん生師とも志ん朝師とも異なる、聴いていて落ち着く落語です。
みなさんもどうぞ、お聴きになってみてくださいね。

それでは、またのお越しをお待ちしております。