お運びをいただきまして、ありがとうございます。
今回は、「おすすめの落語家」シリーズです。
前回は春風亭一之輔師匠をご紹介しましたが、今後は故人・現役を問わず、とくに初心者の方におすすめできる落語家を中心にご紹介していきたいと思います。
落語家の人数は、東京・上方、各協会を合わせれば相当な数になるでしょう。
現役の落語家は現在800人ほどいると言われています。
ましてや、すでに故人となっている師匠方を合わせれば大変な数です。
その中で誰が「名人」なのかという話もまた深いテーマで、簡単に語れることではございません。
ですから最初にお断りしておきますが、これからご紹介していく「おすすめの落語家」は
私の個人的な好み
です。備忘録も兼ねて好きな落語家をご紹介していこうと思います。
今回ご紹介したいのは
5代目・柳家小さん師匠です。
私が中学生のころ好きになった、思い出深い師匠です。
まずは略歴をご紹介しておきましょう。
昭和8年 4代目・小さんに入門。
昭和14年 二ツ目に昇進、小きんに改名
昭和22年 真打昇進、小三治を襲名
昭和25年 5代目・小さんを襲名
平成7年 落語界初の人間国宝に認定
平成14年 心不全のため死去
落語界初の人間国宝とはすごいですねぇ。
でも本当に、国宝とされるにふさわしい方だったと思います。
この「小さん」という名跡は、柳家の止め名とされています。
つまり、柳家という亭号の中の最高位なんですね。
そして小さん師はその名跡にふさわしく、昭和~平成時代の落語界を引っ張ってくださいました。
現在活躍している小三治師、さん喬師、権太楼師、市馬師など、名だたる面々はみな小さん師匠の弟子なのです。
そして当代小さんは5代目の息子であり、若手で人気の花緑師匠はお孫さんです。
さらにさらに、あの立川談志師も、もとはと言えば小さん師の弟子。
小さん師匠がいかに偉大な方であったかがお分かりいただけるでしょう。
芸風は、これぞ名人(←結局使ってしまいました)というもので、滑稽噺を得意とし、人物描写は群を抜いていたと言われています。
小さん師と言えば、「その人間の了見になれ」という教えが有名です。
簡単に言えば、登場人物の心情を十分に汲み取って演じろということですね。
小さん師自身も、師匠であった4代目・小さんから「(狸の噺をするときは)狸の了見になれ」と言われて困った経験があるそうですが、弟子たちには同じ教えを与えていたのだそう。
ちなみに新作派で有名な三遊亭円丈師は著書の中で、
「その人間の了見になれ」とはどういうことかわからない。
与太郎はバカだけど、ぼくはバカではないからバカの了見にはなれない。
と述べています。
円丈師のおっしゃるように、柳派と三遊派では落語の演じ方に異なる伝統があるのかもしれません。
ちなみに私は中学生のころ、小さん師のテープをよく聴いておりました。
今考えれば、
なんとシブい中学生
だったのでしょう。
でも、小さん師で落語を知れたというのは本当に良かったと思います。
確かに派手な高座ではないかも知れません。
しかし、奥深い人物描写や間(ま)の良さがあり、何度聴いても飽きない芸の素晴らしさは、子ども心にもよくわかりました。
語り口や仕草は本当に上品で、江戸落語の魅力にすっかりハマってしまいましたね。
私は大人になるまで他の落語家をほとんど聴かなかったため、
「小さん以外は落語じゃない」
と考えるほどでした(´艸`*)
もちろん今では、他にも好きな落語家は増えましたが。
小さん師匠の得意な噺はあまりに多く、選ぶのも難しいですが、
- 『うどん屋』
- 『短命』
- 『笠碁』
- 『粗忽長屋』
あたりが好きですなぁ。
皆さんも、ぜひDVDやCDで聴いてみてくださいね。