いっぱいのお運びで、厚く御礼申し上げます。

アタシの方は七之輔と申しまして、一席お付き合いを願っておきたいと思います。

噺の方に出てきますのは、たいてい決まっておりまして、熊さんに八っつぁん、横丁のご隠居、マヌケなところで与太郎なんてのがございます。

・・・はい、与太郎噺に多い導入部分ですね。

一席の落語はたいてい、マクラ・本題・オチ(サゲ)という3つの部分で構成されています。

今日は噺の導入部である「マクラ」を解説いたします。

落語の「マクラ」とは

まず「マクラ」という呼び方について考えてみましょう。

和歌の方でも「枕詞」というものがあり、特定の言葉を修飾したり歌の調子を整えたりしますね。

落語でもやはり、いきなり本題に入るのではなく、まずは自己紹介や小噺をして、スムーズに本題に入っていけるようにしています。
それを噺の「マクラ」と呼んでいるんですね。

ほとんどの落語家は、高座に上がるとまず、お客様のご来場に感謝を述べ、自己紹介をします。
それに続く部分は落語家によって、また扱う演目によってじつにさまざま。

詳しい自己紹介近況を楽しく話す人もいれば、時事ネタを取り上げる人もいます。
そしてそれを、扱うネタの話題に上手に繋げていくわけですね。

たとえば、

  • お酒のエピソード→『親子酒』
  • 子どもについてのエピソード→『初天神』
  • 男女の縁の話→『芝浜』

という具合です。

一方で「マクラ」には、本題に入るための解説の役割を果たすこともあります。
江戸時代が舞台になる噺が多いですから、多少の説明がないと、内容やオチが理解できないことがあるからです。

たとえば有名な「時そば」に入るとき、江戸時代の時刻の数え方を解説してから入ることがあります。
現在と違って、江戸時代は独特の数え方をしていたんですね。
詳しいことは省きますが、夜10時頃を「(夜の)四つ」、深夜0時頃を「(暁の)九つ」と呼びました。
じつはその情報が、オチを理解するのに必要なんですね。

そんな情報をさらっと話して本題に入ったりするわけです。
もっとも、詳しいことはわからなくても大方は楽しめるので、あえて説明しない人も多いですが。

「マクラ」にはオリジナリティーが出やすいので、ぜひ注目してみましょう。

いつも同じ「マクラ」を振る落語家も多い?!

寄席で落語を聴いていて気付いたことですが、多くの落語家がいつも同じマクラを振っています。

まぁ大切なのは本題ですし、マクラでは確実に笑いを取って客席を温めたいでしょう。
気持ちはよくわかりますよね。

たとえば三遊亭丈二師匠。
マクラでいつも、自分の高座名のエピソードを語ります。
真打になるまで、三遊亭小田原丈という変な名前だったという話です。

だいたい決まってそのエピソードなのですが、さも初めて話したかのような新鮮さで語れるのがすごいです。
そしてしっかり笑いを取って本題へと入っていきます。

ちなみに丈二師匠は円丈師匠のお弟子さんだけあって(?)異彩を放つ落語家の一人なんですが、私は聞いてしまいました。

丈二師匠が「真打になって名前をやっと変えてもらえたんですよ」と語った時に、
隣の女性客が小さな声でこう言ったんです。

「え、真打なんだ(^-^;」

かわいそうなので、そういうことを言うのは慎みましょう(^m^)

「マクラ」だけで書籍化されることも

さて、落語家の中には、マクラがとても面白いと評判の師匠方もいらっしゃいます。

その代表格が柳家小三治師匠。
「マクラの小三治」の異名をとるほどです。

とても長くマクラを振ることもあるそうで、ひょうひょうと世の中を斬ったり、鋭い観察眼で日常を語ったり、本当に楽しいマクラです。

そして、ご存じの方も多いと思いますが、マクラだけで書籍化されてます!

よければ人間国宝のマクラを、書籍でもお楽しみください(^^)