お運びさまで、御礼申し上げます。
このシリーズでは前回、寄席には「1日の番組の中で同ジャンルの噺はしない」というしきたりがあることをお話ししましたね。
そこで今日は!
寄席や落語会で聴ける演目のジャンルをご紹介していきたいと思います。
寄席ではネタが『付かない』ように落語家たちが配慮しているので、同ジャンルからいくつもの噺が掛かることはほとんどありません。
そんなことも考えながら寄席を楽しむと、いっそう味わい深いものですね。
とはいえこのジャンル分けは、厳密な意味での分類ではありません。
なぜならば、複数ジャンルにまたがる噺も多いからです。
ご紹介するのはあくまで、大ざっぱなジャンル分けだと考えていただければと思います。
それではまいりましょう!
① 長屋噺
落語の定番中の定番は、長屋噺です。
落語の多くは、一般民衆の生活を楽しく切り取ったような話。
長屋はかっこうの舞台になるわけです。
- 『長屋の花見』
- 『粗忽長屋』
- 『らくだ』
- 『大工調べ』
このあたりが代表でしょうか。
なかでも「長屋の花見」は、春に寄席に行けば必ずと言って良いほど耳にする演目。
大家さんと店子(たなこ=住人)のあたたかな関係に、ついほっこりしてしまいます。
そもそも、家賃もろくに入れない店子を大家さんが花見に連れていってあげる噺ですからねぇ。
江戸時代はこんなに人情があふれていたのかと感心してしまいます。
寄席でこの噺を聴くとついつい、
アパートの大家さんを愛しく感じてしまう
かもしれません。
② 与太郎噺
これもド定番。
落語の方には少々抜けた人物が登場するものですが、その代表格が与太郎さんです。
- 『牛ほめ』
- 『道具屋』
- 『金明竹』
- 『かぼちゃ屋』
このあたりが代表的。
何をやってもとんちんかんな与太郎さん。
噺の間、終始爆笑となることが多いです。
たとえばお父さんとの会話。もう大人なんだからしっかりしろと言われる与太郎さんです。
「お前もう『はたち』だろう?」
「いやぁ、はだしじゃねぇ、下駄履いてきた」
「履物のことを言ってんじゃねぇ!歳のことを言ってんだよ!」
「歳は...へへ、おとっつぁん、おれ、二十だ」
「二十のことを『はたち』って言うんだよ!」
「じゃぁ、三十はいたちか?」
・・・もう、ぜんぜん会話が進みません。笑
現代にもいますよね?与太郎さん的な人。
与太郎噺を聴くと、その人の見方が変わります。
これからは愛を込めて、
「ねぇ与太郎(*^^*)」
って呼んであげましょう。
③ 粗忽噺
粗忽者というのは要するに、そそっかしい人のことです。
粗忽者が出てくる噺もいくつかありまして、
- 『粗忽長屋』
- 『粗忽の釘』
- 『粗忽の使者』
このあたりがよく掛かります。
あまりにそそっかしいので、町で倒れている遺体を自分だと勘違いしたりします。笑
現代にそこまでの粗忽者がいたら・・
良い病院を紹介してあげましょう。
④ 泥棒噺
これも寄席の定番です。
客の懐を取り込むということで、縁起のよい噺とされているんですね。
種類も豊富で、
- 『転宅』
- 『だくだく』
- 『釜泥』
その他、さまざまな泥棒さんが噺になっております。
ちなみに落語に出てくる泥棒は、決してうまく盗むことができません。
とくに「だくだく」は、貧乏な家に泥棒が入って、盗んでないのに盗んだ「つもり」になっていくという、いかにも落語らしい噺で好きですねぇ。
とはいえ本当の泥棒は
そこまでおっちょこちょいではない
と思うので、用心しましょう。
さて、パート1では、どれもほのぼのしたり爆笑するようなジャンルをご紹介してきました。
しかし落語の世界は奥が深いもので、色っぽい噺や泣ける話など、多岐にわたるジャンルが存在します。
続きは今度に致しましょう。
またのお越しをお待ちしております。