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落語入門シリーズ、前回は落語家の身分制度について簡単にお話ししました。
今回から、各階級について詳しく解説していきたいと思います。
まずこの記事では「前座」についてです。
前座とは/前座になるまで
「前座」とは、東京の落語家の3階級のうち、一番下の階級です。
「前座」という言葉は仏教のにおいて高僧の前にまず修行僧が話をする「前座(まえざ)説教」が由来とされています。
舞台で主役の前に出てくる人という意味で、落語界以外でも耳にする言葉ですね。
前座は一番下の階級と言いましたが、じつは前座になる前にも踏まなければならないステップがあります。
それは「入門」と「見習い」です。
落語家になりたいと思うなら、いずれかの師匠の元にまず「入門」しなければなりません。
これが一筋縄ではいかず、入門を許してもらえるまで何度も何度も寄席にかよい、師匠が根負けしてついに入門を許された、なんて話をよく聞きます。
師匠の立場としても、弟子を取って育てるならそれなりの根性が良いでしょうから、十分に根性や覚悟があるかを試しているというのもあるでしょう。
晴れて入門が許されると、まずは「見習い」として最低限の礼儀作法を学びます。
見習いの期間は半年~1年ほど。
師匠が頃合いを見計らって所属協会に登録してくれると「見習い」から「前座」になることができるのです。(この時に芸名を師匠からもらいます。)
落語家としての基礎を学ぶ「前座修行」
前座は修行期間に当たりますが、いったいどんな修行をしているのでしょうか。
1つは、師匠の身の回りのお世話です。
昔は内弟子(=住み込みの弟子)とすることが多かったようですが、最近では通い弟子として毎日師匠の家に行って家事や用事をこなすというやり方が多いそう。
また師匠によっては、通いも必要ないという方もいるそうです。
もう1つは寄席での修行。
毎日のように寄席にかよって修行します。
(ただし立川流と円楽党は寄席に出演しないため、寄席での修行はなし)
修行というだけあって、前座の役割はもりだくさん!
- 楽屋でのお茶出し(師匠方一人ひとりの好みの濃さなども覚える)
- 師匠方の着替えの手伝い
- 寄席囃子の太鼓を叩く
- めくり(次の演者を知らせるもの)を返す
- 高座返し(演者が代わるたびに座布団をひっくり返す)
- 根多帳への演目の記録
- 開口一番の高座
このような仕事をすべて数人の前座でこなすため、大忙し。
(寄席での仕事に対しては給金が出ます。)
ちなみに、当日の寄席で働く前座のうち、もっとも先輩の前座を「立前座(たてぜんざ)」と呼びます。
立前座は寄席興行の進行についての決定権を持ち、他の前座に指図し、根多帳の記録を担当する重要な役回りです。
こうした修行のなかで、落語の世界について肌で学んでいくんですね。
先輩の言うことは絶対という縦社会も落語界の特徴で、前座が学ぶ大切な要素です。
前座の期間は一般的に3~4年ほど。
落語自体も勉強しますが、それ以上に落語界そのものを学ぶ期間と言えそうです。
客側から見た「前座」
私たち観客の立場から見ると前座さんはどんな存在でしょうか。
- 開口一番で初々しい落語を披露してくれる存在
- 高座ごとに座布団返しに出てくる可愛い存在
- 今後の成長が楽しみな存在
などなど。落語ファンにとっても爽やかな存在なのが前座さんです。
前座ですからなかなか表舞台には出てきませんが、少し注目してみると寄席をさらに楽しめますよ。
とくに、開口一番の前座さんの落語には独特の魅力が。
覚えた落語を頑張って演じるさまは好感が持てます。
もっとも、芸としてはまだまだですし観客はほとんど笑ってくれませんが^^;
前座さんの落語まで楽しめるようになったら、本当の落語通かも知れません。
ちなみに最近、「美人すぎる落語家」として金原亭乃々香さん(世之介師匠の弟子)が人気です。
落語界もそういう時代になってきたんですねぇ。
アイドル落語家の誕生となるのか、それとも意外に本格派の落語家になるのか、注目です。
まとめ
前座修業は楽なものではなく、この期間に辞めてしまう人もいるそう。
逆に言えば、それほど落語家になるために必要な修行なのでしょう。
これから寄席に行く際は、前座さんにも注目してみましょう!